膠原病とは

膠原病とは

「膠原病」と聞いて、どの様な病気かを想像することができる方は、一般的には少ないかと思われます。英語ですと「Collagen Disease(コラーゲン病)」ですので、美容などに詳しい方には聞き馴染みがあるかもしれません。ですが、そもそも体の細胞と細胞同志をつなげる役割をもつ「膠原線維」が由来であり、膠原病は全身の膠原線維に炎症を起こす6つの病気(現在では5つ)の事を指しました。この中には、関節リウマチなども含まれていました。それからも多くの病気が発見され、この中には膠原線維以外の病気や、いまだ病気自体がよくわかっていないものも出てきたため、現在では単なる「膠原病」から「結合組織病」や「リウマチ性疾患」と言われる事があります。

「リウマチ」言うと「関節リウマチ」のことを思い浮かべる方が多いと思われますが、もともとはラテン語で流れを意味する「ロイマ」が由来であり、悪いものが身体を巡り、痛みやこわばりをもたらすとされていました。このことから、関節の痛みや腫れを生じる病気全般のことを指していました。今では、免疫の異常に伴う病気全般の事を「リウマチ性疾患」と言う場合もあります。よって、体の構造から付けられたものが「膠原病」、症状由来の語源が「リウマチ性疾患」という事になります。

その症状は、病気ごとに異なりはしますが、全身に症状が起こる事が多いです。熱が出たり、関節が痛んだり、皮疹、ありとあらゆる臓器の病気を起こしてきます。これらは本来、外からの細菌やウイルスなどから守るための「免疫力」が暴走し、自分の体を傷つけてしまう事が原因であり、この免疫の暴走を抑える事が治療の主体になります。残念ながら多くの膠原病では、完治することはほとんどありませんが、必要最低限の治療による症状を抑えた「寛解」状態を維持し、一般の方と変わらない日常生活を送って頂く事が最大の目標です。

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデスとは

全身性エリテマトーデスとは、「全身性紅斑性狼瘡」とも呼び、そもそもはループス(狼瘡)という皮膚の病気が知られており、その後全身の臓器に症状を認める事が発見されたため、全身性が付くことになりました。特徴的な皮膚の症状だけでも、アトピーや湿疹などと間違われやすい「皮膚紅斑」や、両頬から鼻にかけて蝶が羽を広げた様な形の赤い皮疹「蝶形紅斑」、日差しに当たった部分が赤く痒くなる「日光過敏」など多彩です。全身の臓器症状として最も重要なものが、「ループス腎炎」という腎臓の病気です。主に血尿やタンパク尿が認められ、急激に腎臓の機能が低下し、最悪の場合は腎不全となり、人工透析が必要な場合もあります。その他にも、発熱や関節痛、血球減少などさまざまな症状が起きる事があります。

発症しやすい方が20〜30代の女性に多いため、早期発見・早期治療ももちろんですが、妊娠や出産などのライフイベントに応じた治療の調整が必要な場合があります。

皮膚筋炎・多発性筋炎

皮膚筋炎・多発性筋炎とは

両者ともに、筋肉に強い炎症が起こり、急激に全身の筋力が低下してくる膠原病です。顔、手、膝などに典型的な皮疹を伴うのが「皮膚筋炎」、皮膚症状を起こさないのが「多発性筋炎」です。また、筋炎症状をほとんど起こさない(あっても軽度)の「無筋症性皮膚筋炎」というタイプも存在します。急激な筋力低下のため階段が突然登れなくなったり、普段持っているものが重く感じたりするなどの症状がでてきます。無症状の場合でも、筋肉のマーカーであるクレアチンキナーゼ(CK)が上昇していることで疑われる場合もあります。気をつけなければならない合併症が2つあり、一つ目が「悪性腫瘍」です。特にご高齢の方が筋炎を発症された場合は合併率が高く、初発時には綿密な検査が必要です。もう一つは、間質性肺炎です。膠原病の多くの病気で間質性肺炎を合併しますが、筋炎の場合はその中でも「急速進行性間質性肺炎」という非常に難治性かつ重症度の高い肺炎を合併する事があります。そのため、早期発見・早期治療が重要です。

強皮症

強皮症とは

強皮症はその字の如く、全身の皮膚が硬くなっていく症状(「皮膚硬化」)が特徴です。皮膚だけではなく、全身の臓器で硬化(線維化)が生じる可能性があります。皮膚の症状の広がり方に特徴があり、広範囲に症状が及ぶほど臓器の症状が出現しやすくなります。大きく分けて、手指や足指から肘や膝までの皮膚硬化が起こる「限局性皮膚硬化型全身性強皮症」、肘や膝を越えて顔や体幹にも皮膚硬化が及ぶ「びまん性皮膚硬化型全身性強皮症」があります。また、部分的な皮膚硬化が起こる「限局性強皮症」がありますが、こちらは皮膚症状だけです。皮膚硬化は、手足の関節部で起こると関節が曲げにくくなり、放置すると関節が固まってしまいます(「屈曲拘縮」)。また、指の先端部の血流が極端に悪くなり「手指潰瘍」や「壊死」が起こる事があります。指が循環不全で真っ白になる「Raynaud現象(レイノー現象)」は、強皮症で高率に起こりますが、他の膠原病でも認められます。

さまざまな臓器に障害をきたしますが、予後に大きく関わるのは、「間質性肺炎」、「肺動脈性肺高血圧症」「心筋の線維化」「強皮症腎(=腎クリーゼ)」です。これらは発見が遅れると致死的リスクとなる可能性が高く、定期的に検査を行い、早期発見・早期対応する事が重要です。

シェーグレン症候群

シェーグレン症候群とは

シェーグレン症候群は、主に涙腺や唾液腺などの分泌腺が壊れてくる病気です。そのため、症状の重いドライアイ・ドライマウスを生じてきます。内科や専門家で初めて見つかることは少なく、通われている眼科、耳鼻科、歯科の先生からご指摘頂く場合が多いです。この場合、ドライアイによる角膜損傷や角膜炎、ドライマウスによる虫歯や咽頭炎などが起きてくるため、それぞれの専門家の先生と協力して診断、治療を行う場合が多くなります。

ほとんどの方は、分泌腺の破壊(腺症状)のみですが、20-25%の方でこれ以外の全身症状(腺外症状)を起こしてきます。多彩な症状ですが、頻度の高いものでは、関節症状、レイノー現象、発熱、リンパ節の腫れ、皮疹、末梢神経症状などがあります。血液検査では、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体が最も良く使われる検査になります。これらは、無症状でも陽性になる場合もあります。

シェーグレン症候群で合併しやすい病気として、慢性甲状腺炎(橋本病)、原発性胆汁性胆管炎があり、加えてその他の膠原病も合併しやすい病気ですので、合わせてこれらの検査が必要となります。また、妊娠中の方の場合、例え無症状であったとしても抗SS-A抗体が陽性ですと、頻度は低いですが、お腹の赤ちゃんに不整脈等が起こりやすくなることもあり、妊娠を希望されている方は一度ご相談ください。